CGでは得られない迫力「トラ・トラ・トラ!」2013年05月15日 06時04分26秒

「トラ・トラ・トラ!」(Tora!Tora!Tora!、1970年)は戦争映画のベスト10入りは間違いないでしょう。日米開戦前夜のコーデル・ハル長官(ジョージ・マクレディ)と日本側のやりとりとか、大日本帝国海軍連合艦隊の攻撃を事前に察知していながら、ハワイの太平洋艦隊司令長官ハズバンド・キンメル大将(マーティン・バルサム)に知らせなくて、キンメル将軍が迎撃態勢を取らずに完全な不意打ちを許してしまったところ。そして、山本五十六連合艦隊司令長官(山村聡)と軍令部とのやりとりなど、真珠湾攻撃の前夜がみごとに描かれています。タイプライターの遅れから、野村駐米大使(島田正吾)がハル長官に真珠湾攻撃が始まった直後に宣戦布告文書を渡すシーンも印象に残っていますね。

そして、単冠湾に終結した連合艦隊が12月8日の攻撃開始指令を受けて、赤城、加賀、蒼龍、飛龍の各空母から艦爆、艦攻、そして戦闘機が朝日の中を飛び立って行く瞬間の描写。ゼロ戦はノースアメリカンT-6テキサン、九九式艦爆はバルティーBT-13など、日本機になるべく似たような実機を使っています。そして、攻撃されたアメリカ側もカーチスP-40やベルP-39など実機を使っています。そして、戦闘には参加しませんが、B-17爆撃機も本物です。ヒッカム飛行場が攻撃されて燃え上がるシーン、戦闘機が火だるまとなって吹っ飛ぶシーンなどは一発勝負で撮影されたものです。CGでは絶対に出せない迫力となっています。

そして、人間性の描き方もていねいで、素晴らしい映画になっていますね。たとえば、キンメル長官の最後に涙をこぼすシーンもそうですが、猪突猛進のウイリアム・「ブル」・ハルゼー中将が空母機動部隊を率いながら、連合艦隊の空母を発見できなかった悔しさ。二次攻撃の必要があるとの打電を受けながら、それをやめて帰投を命令する南雲忠一中将(第一航空艦隊司令長官)、空母赤城の飛行隊長淵田美津雄中佐(田村高廣)の関西弁丸出しの「トラ、トラ、トラや!」と無線に向かって叫ぶシーン。渥美清の炊事係が同僚の松山英太郎と、「日付変更線を超えて撃ったら、昨日に向かって撃つことになるから、弾丸は届きっこない」と冗談をいうシーン(これは後にカットされます)、など例を挙げればきりがありません。

日米合作のハリウッド映画なのですが、リチャード・フライシャー監督、そして舛田利雄監督と深作欣二監督、とスタッフも豪華です(黒澤明監督は途中で交代)。