小品だが、名作と言える「蒲田行進曲」2023年07月27日 15時41分38秒

 日本映画にはそれほど詳しくないのですが、この「蒲田行進曲」は珠玉の名作と言っていい映画だと思っています。つかこうへいが自身原作の戯曲を映画化したもので、キャストも主演の松坂慶子、風間杜夫、平田満の3人がほとんどのシーンに出てくるだけです。カメオ的な出演として、千葉真一、真田広之、志穂美悦子が本名で出てきますが、ほかに目立つのは蟹江敬三の監督ぐらい。あとは原田大二郎が風間杜夫演じる銀ちゃんの敵役として目立つぐらいでしょうか。いちおうスター俳優なのに子供っぽく暴君の銀ちゃん、以前はスター女優でしたが、現在では売れずに銀ちゃんに尽くす松坂慶子の小夏。そして、銀ちゃんの忠実な子分である大部屋俳優のヤス(平田満)。この3人が織りなす蒲田撮影所の日常を描く作品です。3人が合唱する「蒲田行進曲」(jキネマの天地)がこの映画のおかげでリバイバルヒットし、JR蒲田駅の発車メロディーはこの「蒲田行進曲」になっています。この映画の見せ場はヤスの「階段落ち」で、スタントを使っていますが、ほんとうに高い階段から落下しています。あとは銀ちゃんの子供を身ごもっている小夏をヤスに押し付けるというのももうひとつのプロットでしょうか。階段落ちとなんでも銀ちゃんの言うことに従うヤスの悲哀、このふたつのファクターで、ヤスが主演のように見えてしまいます。

 実際、日本アカデミー賞では、平田満が主演男優賞、松坂慶子が主演女優賞、風間杜夫は助演男優賞でした。この授賞式で、平田が受賞をコールされたときの風間の鬼のような形相が忘れられません。私もこの映画の主演は銀ちゃんの風間杜夫だと思っています。監督は「仁義なき戦い」の深作欣二で、松竹と角川事務所の1982年の合作です。