娯楽西部劇のナンバーワンは「リオ・ブラボー」2013年04月08日 11時24分02秒

アメリカ映画を代表するジャンルのひとつは西部劇でしょう。1970年代まではたくさんの西部劇が作られました。私の映画遍歴でもいちばん大きなウエートを占めているのが西部劇です。中でも、「リオ・ブラボー」(Rio Bravo、1959年)は忘れることのできない娯楽西部劇なのです。

まず、キャストがこの映画を楽しくしているポイントでしょう。主演の保安官ジョン・T・チャンスにジョン・ウエイン、相棒の副保安官に酔いどれのディーン・マーティン、保安官助手に爺さんのウォルター・ブレナン、そして早撃ちだがまだ若いコロラドのリッキー・ネルソン。チャンス保安官の親友に幌馬車隊長のワード・ボンド、チャンスと対立する悪党のネイサンにジョン・ラッセル、その弟にクロード・エイキンズ、チャンス保安官の恋人にアンジー・ディッキンソン、そしてネイサンに雇われて、「皆殺しの歌」を演奏するのがネルソン・リドル楽団。

おきまりの早撃ちシーンは、なんと言っても、丸腰のチャンス保安官がネイサン一味に襲われたとき、コロラドが鉢植えでガラスを割り、悪党の注意が一瞬それたすきに、コロラドがチャンスに愛用のウインチェスターライフルを投げ、同時にコロラドも二丁拳銃で悪党一味を片付けてしまう場面でしょう。

そして、保安官事務所で、ディーン・マーチンとリッキー・ネルソンというふたりの歌手が、ウォルター・ブレナンの合いの手をバックに、「ライフルと愛馬」という名曲を歌うシーンも楽しいものでした。そして、ネルソン・リドル楽団の不気味な「皆殺しの歌」も耳に残っています。

「赤い河」などで知られる西部劇の巨匠ハワード・ホークスが楽しんでこの「リオ・ブラボー」を作っているのがよくわかる映画でした。

キャスリーン・ターナーのデビュー作「白いドレスの女」2013年04月08日 12時52分25秒

私がキャスリーン・ターナーという女優の存在を知ったのは1981年の「白いドレスの女」(Body Heat、1981年)でした。実際に、この映画はキャスリーンの映画デビュー作だったのです。そして、強烈なキャラクターを演じて、後の「ロマンシング・ストーン」シリーズとか、「ローズ家の戦争」とか、「偶然の旅行者」など、キャスリーン主演の映画をいくつか見るきっかけになったのです。

この映画のあらすじは、ネタバレを覚悟で書くと、辣腕弁護士(ウイリアム・ハート)が偶然知り合った白いドレスをいつも着ている女性(キャスリーン・ターナー)と親しくなり、だんだんと深みにはまって行きます。そして、女性の夫(リチャード・クレンナ)の殺害を依頼されるのです。そして、女性の紹介で、爆弾マニア(ミッキー・ローク)と知り合い、殺害計画を実行にうつすのですが、思わぬ展開が待っていました。白いドレスの女性は自宅のボートハウスで爆死し、弁護士は彼女の夫を謀殺した第一級殺人で起訴されるのですが・・・。

この映画のメガホンをとったのは、新進気鋭のローレンス・カスダン監督であり、のちに「再会のとき」や「シルバラード」を監督し、さらに「ボディー・ガード」の脚本と制作も手がけることになるのです。カスダン監督は登場人物をほとんど上記の4人しか出てこないサスペンス映画を作ったのです。と同時に、キャスリーンとウイリアム・ハートのベッドシーンはこの映画を「最もセクシーな映画」のひとつに選ばせたぐらいです。

このサスペンス映画は最後に大きなどんでん返しがあるのですが、そこまでばらしてしまっては興味がなくなるかも知れませんので、内緒にしておきます。

ボディーガードものの最高傑作「ザ・シークレット・サービス」2013年04月08日 13時29分52秒

日本ではたぶん「ボディーガード」がボディーガードものの映画としてはいちばん人気があるでしょうね。主演のホイットニー・ヒューストンの主題歌が大ヒットしましたし、同じく主演のケビン・コスナーは日本でもっとも人気のある男優のひとりでしたから。でも、個人的には、クリント・イーストウッドの「ザ・シークレット・サービス」(In the Line of Fire、1996年)がボディーガードものの最高傑作だと思っています。なぜなら、スリルとサスペンスにあふれながらも、リアリティーがあるからです。それは、「Uボート」を作ったウォルフガング・ピーターゼンが監督のせいもあるでしょうが、イーストウッドの演技がリアルだからです。

ジョン・F・ケネディー大統領のボディーガード(シークレットサービス)だったフランク(イーストウッド)は、大統領を暗殺から守れなかったことをずっと後悔していました。そして、現職大統領の再選選挙が行われることになり、フランクはシークレットサービスの一員として、大統領を警護することになります。その大統領を暗殺しようとつけ狙うのが殺し屋ミッチ(ジョン・マルコビッチ)で、変装の名人です。そして、銃の専門家でもあり、自作の銃を使って大統領を暗殺しようとするのですが、寸前のところでフランクに阻止されるのでした。

リアルというのは、フランクが年取ったシークレットサービス部員で、大統領の車を走りながら警護するときに、ぜいぜいと息を荒くして、部下のリリー(ルネ・ロッソ)などに馬鹿にされる点です。ずっとかっこいいヒーローを演じてきたイーストウッドが、停年間際のシークレットサービス部員として、足手まといになっているのがリアルなわけです。

そして、ジョン・マルコビッチはいかにも芸達者なところを見せて、不気味な殺し屋を演じています。

報道カメラマンの真実を描いた「アンダー・ファイア」2013年04月08日 14時07分14秒

リアルなだけでは面白い映画とは言えませんが、リアルでしかも面白い映画こそ個人的にはいちばん好きな映画です。そういう映画は日本ではあまり受けが良くないために有名にはならないで、小作品として扱われてしまいます。そういう映画のひとつがロジャー・スポスティウッド監督の「アンダー・ファイア」(Under Fire、1983年)でしょう。報道カメラマンは真実を伝える役割を持つ、と言われますが、大義のためなら、嘘を報道しても構わないのか、という根源的な問題をつきつけた映画です。

報道カメラマンのラッセル(ニック・ノルティ)はニカラグア内戦の取材に赴きます。そこで見たのは、ソモサ大統領の暴政と、それに立ち向かうゲリラ(サンディニスタ)の姿でした。そして、同僚のクレア(ジョアンナ・キャシディ)とともに、ゲリラに接触することに成功します。ところが、ゲリラ側に逆に頼まれてしまうのです。それは、サンディニスタのリーダーが戦闘で死亡したのを、あたかも生きているように撮影することだったのです。ラッセルは報道カメラマンという職業と、現実に起きている正義のための闘いのはざまで苦悩するのですが、結局はゲリラの要望どおりに撮影をします。その写真が新聞の一面に掲載され、サンディニスタは勢いを盛り返して、最終的には政府軍を打倒しサンディニスタ革命を成功させるのです。

その新聞社の幹部アレックスになるのがジーン・ハックマン、取材で知り合った政府軍側の傭兵オーツがエド・ハリス、フランスの情報部員らしい正体不明のマルセルがジャン=ルイ・トランティニャン、と小作品にも関わらずに豪華なキャストです。

そして、個人的にはニック・ノルティ扮する報道カメラマンのいでたちにも注目しました。当時の報道カメラマンらしく、首からはライカM4、そして肩からは望遠レンズを付けたニコンF2を下げています。アクションスターだったニック・ノルティが一転して、むずかしい役を演じたのがこの映画です。